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全国未亡人連合-画廊・辻斬り-



「宵闇に、紛れる影は鷹か辻か。



人馳せぬ闇に溶けいる剣客に、

向かうわが兄(せ)の背に見揺る

翳りは今生の別れと見えにけり」



節子は不安だった、辻斬りを捕まえるために

出かけた与力の夫に、万一のことがあったら・・・。



二刻ほどたったとき、いてもたっても入られず、

合口を袂にいれ、表にでて街を駆け出した。



暗い夜道、月の光に照らされる武家屋敷の塀は

死人の肌のようにただ白かった。

嫌な予感は一層高まった。



どのくらい走っただろうか、街外れの角路に

人影を見た、夫と、辻斬りだった。



夫は刀を杖のように大地にさし、息も絶え絶えだった

辻斬りはそんな夫にとどめを刺さんと、刀を上段に構えていた。



「あなた!」節子は叫んだ

「お節! 寄るな! 逃げるんだ」夫は弱弱しい声で言った。

そんな夫の背に向け、辻斬りは無常の刃を振るった。



崩れ落ちる夫に取りすがろうと脚を踏み出したとき、

辻斬りは節子の前の空間に向け刃を振るった、

刀に付着した、まだ生暖かい夫の血が節子の顔についた。

凍りついたように、脚が棒のようになり立ちすくんだ。

このとき初めて恐怖が体を駆け巡った。



「女までは切らぬ」そう言い、辻斬りは刀を納め、立ち去っていった。

どのくらい刻がたち、月が西に傾いただろうか。

節子はただぼんやりと夫のなきがらを眺めていた。



「ねえ、あなた。私を置いて、逝く気なのですか?」

誰に向けて言っているのだろうか、ぼんやりとそうつぶやき、初めて涙が流れてきた。



喪に服している間、辻斬りがこの街から姿を消し、

ふらりと別の街に移ったという話を耳にした。

喪が明けるとすぐ、節子は旅に出た、もちろん、あの男を捜すための旅に――



そのときの節子に、まだ知る由もなかった、5年後恋に落ち、

再婚することとなった旦那こそが、あの辻斬りであることを――。

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